FIELD NOTE KUSHIRO

北海道くしろ地方のローカルメディア「フィールドノート」のブログ

ある視点~唄とともに生きるということ。 FIELD NOTE 05 より

唄とともに生きるということ。

2016年11月19日~12月2日にかけて、渋谷ユーロスペースにて上映されたカピウとアパッポ~アイヌの姉妹の物語~。昨年は映画の上映だけではなくCDのリリースと幅広く活躍したお二人に唄について色々とお話しさせていただきました。

 

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唄と生活

-小さい頃から唄や踊りが身近にあったというお二人が、あらためて大人になって唄いはじめたというのは、いつ頃からになるのでしょうか?

 

床 絵美(以下:絵)私は東京のアイヌ料理店で働いていた時ですね。東京の若いアイヌの子やOKIさん等に誘われて。

 

郷右近 富貴子(以下:富)私は2007年から始まった早朝遊覧船に語り部としてのお仕事をいただいた頃からですね。もともとウポポ(唄)に対しては、思い入れもあるし、大事なものだったから。それに対してはすごく畏敬の念もあったし、それでいて楽しむものでもあったし、自分の中のものというか。ウポポを一人で唄うようになったのは、その頃からでしょうか。

 

-そうした思い入れのある曲を人前で唄うというのは、なにか抵抗があるように感じますが、どうだったのでしょうか?

 

富:阿寒湖という所は、沢山の観光客の皆さんが来られる所ですが、その中で自分自身の大切にしているアイヌの世界観を、構えることなく分かりやすくどう伝えるか…ということを考えつつ、お話ししたり唄ってみたりしています。

 

絵:もちろん本来は祭りの場や、家庭の中で唄われていたものを人前で唄うというのは、不自然なことだと思います。それに私達がうたう唄は伝承されてきたものです。自然と身が引き締まります。でも、あえて人の前に出て唄うことは伝えたいという気持ちが強いのだと思います。

 

 精神性とアイデンティティ

-そういった無形文化遺産と呼ばれる、舞台の場と身近な生活が隣り合わせになっていることに、何か気持ちの揺れを感じたりはしませんでしたか?

 

絵:見せ方や伝え方って色々な方法があるし、受けとめ方も色々な人がいるから。昔から唄ってきたことや踊りとかは一人ひとり想いが違うと思うけれど、アイデンティティのひとつになっているんじゃないかな。目的は本来そうだと思うんだけど。

 

富:今もあるよね。その辺は子どもたちも結構、強く意識してきているよね。

 

絵:そうそう。私はアイヌ民族よ、って娘に言われたことあるし。笑

 

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受継がれるもの

-そう言い切っちゃうくらいに、子どもながらに個として誇れるものを何か感じているのでしょうか、素敵ですね。富貴子さんはこうした場で生きていくことについて、自分の思いと舞台の面との向き合い方みたいなものって何かありますか?

 

富:映画にも出てきますけど、阿寒湖にいる弟子シギ子さんや母の存在がとても大きいと思います。それは踊ることだけでなくて、もっとソフトな精神面の部分で。泣いたり笑ったりしながら教えてもらった唄があるので。そこは姉と二人で唄う時は大事なところですね。あとは浦河のお婆ちゃんの精神性とか、ものすごい影響受けているし。もっと大事なものはそこにありますね。

 

絵:ただ、なぞって唄うだけでなくてね。そうやって想いやカタチにできないものとかも唄と一緒に生きていくんだなって。

 

-共に成長していく感じでしょうか。

 

富:成長って意味でいうと、若いときに教わった「カピウウポポ」って唄がそうですね。映画のテーマにもなっていますけど。親心とかも知る由もない10代の頃に教わりました。笑

「子どもをどうやって食べさせてくの?」

「盗んででも食べさせてくよ」

「どうやって着せてくの?」

「盗んででも着せていくよ」

といった内容の唄で。それがやっぱり今、母になって唄えば自分に沁みてくる。それをシギ子おばちゃんの家に集まって、母たちが飲みながら楽しんで唄っていて、そこに紛れて教わって。笑

 

-その唄の音符や歌詞とかを何かに残す訳じゃなく?

 

富:そうそう。その時の思いとか気持ちとか、ムード。それは唄うたびに違うかな。

残すとすればこの唄は心にありますね。

 

絵:だからって今そうやって自分ができているかって言われると、どうかなーとかね。まぁ、もうちょっと子どもたちが大きくなってからかな。

 

富:今はまだね。でも、きっといつか子どもたちが大きくなって、それこそお酒飲みながら私たちが「ちょっとあんたたちこの唄ききなさい」って、言ってね。笑

 

絵:そうそう。この前ちょうど大きくなったら一緒に歌おうねって、娘と話していて。そしたら「うん」、て言ってくれてね。

嬉しかったんだ。笑

 

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■【Kapiw & Apappo】(カピウ&アパッポ)

2011年に床 絵美(カピウ:アイヌ語でカモメ)、郷右近 富貴子(アパッポ:アイヌ語で花・福寿草)の姉妹によって結成されたアイヌ伝統歌のユニット。ウポポ(アイヌの唄)、ムックリ(竹製の口琴)、トンコリ樺太アイヌ由来の弦楽器)なども演奏する。 ふたりが生まれ育ち受け継いだ阿寒湖/釧路地方の唄を中心に、 伝統に根ざした”いま現在の唄”を歌う。ふたりの対照的なキャラクターと姉妹ならではの息の合った掛け合い(ウコウク)が持ち味で、その歌声には定評がある。 近年、絵美は現代音楽家やコンテンポラリーダンサーとの共演、 富貴子はサハ共和国をはじめとする海外での交流など、それぞれにソロとしても活動する。

 

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【Kapiw & Apappo】

1st Album「Paykar」

¥2,000(+tax)

 

アイヌ料理の店 ポロンノ

Art jewelry Ague –アトリエ ラカン

辻谷商店・つじや食堂

Kapiw & Apappo Facebookページにて、発売中。