FIELD NOTE KUSHIRO

北海道くしろ地方のローカルメディア「フィールドノート」のブログ

思いと言葉 しっでぃぐりーんネットワーク FIELD NOTE01より

このマチが活気にあふれるところをイメージしてみる。すると見えてくるのはお店とお客さんとの交流や、お店が繁盛している様子。

地元のお店が繁盛すること。それが「マチづくり」や「地域活性」と呼ばれるものにも繋がるのでは?と思います。

このマチにしかいない会社の社長さんやお店の店主さん、その思いと言葉をご紹介する連載。

 

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今回は「安全な食べ物を安心して食べられるように」という思いで活動している、

阿寒町のしっでぃぐりーんネットワーク代表の川原智道さんのお話しをご紹介します。

 

─ まずは「しっでぃぐりーんネットワーク」の名前の由来からお聞きします。

 

川原(以下○):「しっでぃ」というのは、サンスクリット語で「完全性」とか「無限性」といった意味があって、「ぐりーん」は食べるもののイメージ、それを合わせて「食べるもので完全な健康を望む集まり」というのが、しっでぃぐりーんネットワークの名前の由来だよね。

 

─ この仕事をはじめようと思ったキッカケは?

 

○もともとボランティアでお米の宅配をやったりしていて、お米だけじゃなく卵やにんじん、お醤油もないの?といったような要望に応えるうちに、ボランティアじゃなく利益を得て責任のある仕事としてやろう、と思って「しっでぃ」をはじめたの。

 

─ それはいつ頃ですか?

 

○1992年だから23年前だね。当時は無農薬ってあったけど、社会的に認知されてなくてね。無農薬栽培の野菜ってだけで、なんか胡散臭いみたいな。笑

阿寒町に来たときはそんな感じだったね。

 

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─ 今でこそネットなどの情報があるので有機野菜とか広まっているとは思いますが、どうなのでしょうか。

 

○そうだね。特に田舎に行けば行くほど安全なものに対しての意識が低く感じて。それは情報がないって事もあるかもしれないけど、それより「自分のところで作っている」というのがデカいと思う。食べ物を作っちゃっているから。

逆に言うと無頓着になっちゃっている。なんかこう自然があるから、自然は豊かなものだって思い込んでいる認識があるから。

 

─ 自然そのものが当たり前になってしまっている感じですかね、悪い意味で。

 

○そうそう。農薬とか薬を使うってこと自体に全く悪意がないんだもん。当然だからって感じで使っちゃうから。

 

─ では、川原さん自身が「安全なものを当たり前に」と思うようになったのは?

 

○キッカケとしては子どもの誕生というのが凄く大きかったね。産まれた子どもに対して、俺は何を与えるのかなって。一つひとつ全てにおいて。与える物もそうだし、親としての人格としてもそうだし。親としてどうなんだろう?って考えていった時に、どんどん「安全なものを当たり前に」って、思うようになっていったんだろうね。自然な流れだとは思うんだ、それが。

 

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─ そうですね。小さいうちの子どもは自分でものを選べないから、親が安全なものを選ばないと、ですね。

 

○でも、なかなか当時は安全なものって手に入るものでもないし、はじめは自給自足的な暮らしをしようと思っていたの。自分がつくろうって。当時は札幌にいて、田舎暮らしに憧れていたのもあって。最初はつくる側になりたかったんだよね。まぁその夢は叶わず、今は逆に販売するようになっちゃたんだけど。笑

 

─ そんな話があったんですね。では、安全なものをつくる作り手さんは、当時から見て今ってどうなのでしょうか?増えていますか?

 

○増えている。安全なものをつくりたいって人は増えているよ、少しずつね。以前から無農薬栽培をやっている人はいたけど、無農薬栽培についての知識や技術というのが色々つくられてきている。自然農法にしても色んな自然農法が、農法として技術的に確立しつつある部分があるから、今まで慣行栽培をしていた農家の息子さんが「俺、無農薬でやろうかな」とか。徐々にシフトしてきているね。

 

─ 嬉しいことですね。でも、一般的にはあまり知られてないようにも思います。

 

○今ね、日本の有機農産物と言われるものの割合っていうのが、農水省の発表では0.16パセント。

 

─ え!1パーセントもいってないんですね。

 

○増えているといってもその世界なの。まぁ、外国の有機ってのも色々あるからね。最終的には1パーセントくらいにはなるかもしれない。でも99パーセントはまだその世界なの。

うちらはいつもそういう安心なものしか見てないし、仲間もそういうもの好きな人たちばかりだからね、さも当然だなって思うんだけどさ。自分らが当たり前に思っていても一歩外に出たら全然違う。

まだまだ知られてないし、誤解をうけている部分っていっぱいあると思う。安全な食べものは値段が高いとかね。間違った認識をされているんだなって思うよ。

 

─ 「安いから買う」とかですよね。でも裏の表記見たら添加物いっぱい、みたいな。私もそうですけど収入に応じた食費の中で、食べものを購入してくしかないというか。根っこの部分では安心なものを食べたい!と思っていても、それがなかなか難しい。そういった人は多いのかなって思います。

 

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○それは分かる。でも、最初に生活が苦しくなって切り詰める部分って食費なんだよ。それ以外のものってなかなか切り詰められないから。食費は切り詰めやすいという事もあってそうなっていると思うんだよね。それは確かにそうだろうなって思う。社会システムがそうだからね。

 

─ でも、安心なものが知られてないからこそメディアや行政こそが、もっとPRしてってほしいなと思うのですが。そういった安心・安全なものをつくる作り手さんを押し上げるような動きとか、国の支援とかでやっていたりするんでしょうか?

 

○潰す気持ちは強いだろうけど。押し上げるってことはないよね。(笑)よりそっちの方を強めていきたい訳じゃない?どちらかと言うと、より問題が起きる方向、より病気になる方向。より壊れる方向性。そっちの方向性で今の経済をつくっている。

 

─ 破壊的な経済ですね。

 

○そう、今の社会システムというのはね。だから、そっちの方向性じゃないものはどんどん淘汰されてく、潰される対象になってくと思うけどね。ただジワジワとね、今まで潰されていたパワーが少しずつ、フクイチをキッカケに変わってきているなって思ってるね。311以降、若い人たちが少しずつ多くなってきているなって思う。

 

─ 若い世代の人も方法がわからないだけで、破壊的な経済よりも、健康な経済を生きたいと思っているのでは?と思います。

 

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○俺はさ、お金を得る方法を考えたときに自分は田舎暮らしをしたい、けれど田舎では収入になるような仕事がないじゃない?その中で出た結果なんだと思うのね。だから無農薬が高いとか、そういう事じゃなくて。自分の生き方の方法として、そういうものしか選択しないという自分の中でもう、ある程度決めちゃっているから。その自分の決めた中で、一体自分は何ができるのかな、っていう部分ではあるよね。

だから、お金がないから安全なものは買えないっていうのではなくて、安全なものしか買わないから、っていうふうにしか思ってないから。イメージとしては。

 

─ そういった決断をしないとなかなか変われないかもしれないですね。コンビニの弁当一つにしても今の大量生産、大量消費のシステムだったり。バランスとりながらシフトしていければいいですけど。

 

○バランスとるのってなかなか難しいんだよね。徐々にやるってのは結局いつまでたってもできないって言っているようなもので。だからどこかで踏ん切りをつけるというか、もうこっちの方だって。俺はもう、そこの中でしか生きていけないんだっていう。そこの周波数を選ぶことができるかどうかだと思うの。その勇気が自分の中にあるかどうか。

でも、どの周波数を選んでも必ず生きて行けるから、これは。その今の中で生きていけないなって思うのは、今の周波数の中でものを考えているからで。そうじゃない周波数の中で考えていけば、それは生きていけると思う。

 

─ なるほど。

 

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○要するにちょっとしたことだと思うのさ、例えば醤油の値段が2倍であれば2分の1で済むように使えばいいだけの話しだからね、結局は。それは自分の生活を振り返れば良く分かる、どれだけ無駄をつかっているのかなって。色んなことを考えるとそんな事くらいだったら当然できると思う。

お金いっぱい持っているからって、そういう生活をしている訳ではなくて、お金無くたってそういう生活をする人はする訳だから。それはもう、その人の思いでしかないよね。

 

─ 周波数、考え方ですかね。確かに、変えないと考えられない考え方ってあると思います。

 

○昔はさ、そういう中にいるとそうじゃない人たちを攻撃したり、否定したりとかね。認めなかったりっていう部分もあったりね、でも今はそれは全然ないと思う。

それもあるだろうし、これもあるだろうしって。ただ、自分として何を選択しているかってだけの話しであって、相手の選択するものがどうかっていうのは全然、大きな問題ではないと思うのね。どっちで生きてもいいだろうなって。

ただ、俺はこういう生き方の方がいいなって思っているから、一人でも多くの人と一緒に楽しめればいいなって思うけど。まぁ自然な傾向だと思う。仲間をほしいっていうのは。

 

─ そうですね、強制したりすることなく、それぞれが選んで行き着いたら一緒だった、みたいな。そんなのが理想です。

 

○うん。でも、地球は俺らみたいな1パーセントではなくて、99パーセントの集合意識の中で動いていくと思うんだけどさ。その中で、俺はそうじゃないって思うけど、思っているけど、99パーセントを引っ張りながら生きていかなきゃいけないじゃない。要するに原発再稼働や核のゴミをどこに埋めましょうとか、決めたりするのは99パーセントの意識。

俺らは嫌だと思うかもしれないけど、そういうふうになっていくじゃない。それが今の現実だよね、集合意識の中で。

どんなに嫌がってもその中で生きて行かなければならないのであれば、俺はやっぱり楽しく生きていきたいと思う。だからといって、そこに埋没したくない。自分を保っていたいって思いはあるよね。

 

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─ 私がそうですけど、20代・30代って生き方とか、仕事の仕方とか、模索する世代だと思うんですよね。社会との関わりや自分の暮らし方、暮らしの価値、お金の使い方、人生についてとか。そういった世代の人たちにはとても響くお話しだったと思います。そして川原さんのような考え方もあるということ、世代を越えてもっと知ってもらいたいですね。

では、最後になりますがフィールドノートを読んで頂いている方に向けてメッセージをお願いします。

 

○大きいものではなくて、小さいものだと思うよね。より小さいもの、より地産地消だったり地元重視だったりとか。そういうことをしてくことが実は地域を豊かにしてくことになると俺は思っているの。で、小さい所と付き合うということは、簡単に変えることができるのさ。例えば山田商店さんていう店があれば、お店の人にこの魚じゃなくてこっちの魚を置いてよとか。山田さん、遺伝子組み換えのもの置かないでよとか。わたしたちそうじゃないものなら買うからって、そういうふうにお願いできるのは、小さいお店だからこそできるんだわ。

俺らがいくら大型スーパーで物を買ったりしても、絶対俺らは豊かにならないから。

要するにお金を渡して終わりだから。で、大型スーパーは儲かるけど、地元は何も潤わない。だから本当に地元を潤わそうとするのであれば、そういう地元で頑張っている人たちと付き合う。で、もちろん地元が良いだけではないし、悪いところもいっぱいあると思う。けれど、その悪いところも変えられるのも地元の人だと思うから。お店の品揃えが悪いから行かない、とかじゃなくて品揃えが悪ければ品揃えを良くするのが俺らだし、そうやって支えていくことが大切だと思うんだわ。そしたら地元で働く人もどんどん増えてくるだろうし、活気のあるマチづくりというのはそういうことなんだと思うよね。

 

─ 地元の人が地元のお店のサポーターになるようなことですかね。

 

○そうだね、そういうことだね。それが大切だね。

 

 

2016 年1月 発行 / FIELD NOTE01, 6P-7Pにてご紹介

取材,撮影,文:清水 たつや

写真提供:橘珈琲店 https://www.instagram.com/tachibana__coffee/